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ハステロイとは?種類や用途、違いについて詳しく解説

ハステロイとは?種類や用途、違いについて詳しく解説

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ハステロイとは?種類や用途、違いについて詳しく解説

ハステロイ(Hastelloy)は、ニッケルを主成分とした耐食合金で、特に化学・医薬・海洋・原子力といった過酷な環境下で使用される素材です。優れた耐酸性・耐熱性を持ち、インコネルと並ぶ高機能金属として知られています。近年、日本国内でも設備の高性能化や省メンテナンス化が進む中で、ハステロイのような高耐久合金の需要が高まっています。しかし一方で、加工が非常に難しく、適切な工具選定や切削条件の設定が不可欠です。本記事では、ハステロイの基本情報から、インコネルとSUSとの違い、さらに加工における注意点までを、製造業の営業担当者様にも分かりやすくご紹介していきます。

1.ハステロイとは?

ハステロイ(Hastelloy)は、アメリカのヘインズ社(Haynes International, Inc.)が開発したニッケルを主成分とする耐食合金の商標名です。​主にモリブデンやクロム、鉄などを添加することで、優れた耐食性や耐熱性を実現しています。​この特性から、化学プラントや海洋構造物、航空宇宙産業など、過酷な環境下での使用に適しています。
ニッケル基合金の中でも特に耐食性に優れた材料として位置づけられています。​同じニッケル基合金であるインコネルと比較すると、ハステロイは耐食性に特化しており、特に酸性環境下での使用に適しています。

インコネルとの違い

インコネルは、ニッケルにクロムや鉄を添加した合金で、高温環境下での強度や耐酸化性に優れています。​一方、ハステロイは、ニッケルにモリブデンやクロムを高濃度で添加することで、酸性環境下での耐食性を高めています。​そのため、インコネルは高温環境下での構造材として、ハステロイは腐食環境下での配管や容器材として使用されることが多いです。​

SUSとの違い

SUS(ステンレス鋼)は、鉄を主成分とし、クロムやニッケルを添加することで耐食性を高めた合金です。​一般的な耐食性や耐熱性はありますが、ハステロイと比較すると、特に強酸性環境下での耐食性や高温環境下での耐熱性は劣ります。

2.ハステロイの主な特徴とメリット

優れた耐食性と耐酸性

ハステロイは、塩酸や硫酸などの強酸性環境下でも優れた耐食性を発揮します。​これは、モリブデンやクロムの高濃度添加によるものです。

耐熱性と構造安定性

高温環境下でも機械的特性を維持するため、熱交換器や高温ガス環境下での配管材としても使用されています。​

溶接性・加工性に関する特徴

ハステロイは、溶接や鍛造などの加工に適しており、複雑な形状の部品製作にも対応可能です。

3.ハステロイの注意点・デメリット

高コストと入手性の課題

ハステロイは、ニッケルやモリブデンなどの高価な元素を多く含むため、材料コストが高くなります。​また、特殊な合金であるため、入手性にも課題があります。​

加工が難しい理由とは?

ハステロイは、加工硬化性が高く、切削時に高温となるため、工具の摩耗が激しくなります。​そのため、加工には高性能な切削工具と適切な切削条件の設定が必要です。

4.代表的なハステロイの種類と用途

ハステロイC系(C-22、C-276など)

ハステロイC-22は、酸化性環境下での耐食性に優れ、化学プラントや医薬品製造装置で使用されます。​C-276は、塩酸や硫酸などの強酸性環境下での耐食性に優れ、化学プラントや海洋構造物で使用されます。​

ハステロイB系(B-2など)

ハステロイB-2は、還元性環境下での耐食性に優れ、塩酸や硫酸などの強酸性環境下での使用に適しています。

ハステロイX(航空エンジン向け)

ハステロイXは、耐酸化性と高温強度に優れたニッケル基合金で、特に1,100℃前後の高温環境でも安定した性能を発揮します。このため、航空機エンジンの燃焼室や排気系部品、さらにはガスタービン構造材など、極めて過酷な条件が求められる分野で広く使用されています。

5.ハステロイの加工における課題

ハステロイは、非常に優れた耐食性・耐熱性を持つ一方で、加工が非常に難しい「難削材」としても知られています。これは主に、以下の3つの要因によるものです。

加工硬化性が高い

ハステロイは、切削加工の際に材料が局所的に硬化しやすい性質を持っています。これにより、一度加工された部分がより硬くなり、次の切削時に工具への負荷が急激に増加します。この「加工硬化」は、刃先へのダメージや摩耗を加速させ、加工精度の低下や仕上がりのばらつきにつながります。

切削抵抗が大きく、熱がこもりやすい

ハステロイは靱性(ねばり)が高く、切りくずが分断されにくいため、切削抵抗が大きくなります。さらに、熱伝導率が低いことから、加工時に発生した熱が工具側に集中しやすく、切削点の温度が異常に上昇する傾向にあります。その結果、工具の焼き付きや急激な摩耗が発生し、工具寿命が著しく短くなる原因になります。

切りくずの排出性が悪い

粘り気のあるハステロイでは、切りくずが長く伸びたり、絡み合ったりしてしまうことが多く、工具やワークに巻きつくことで加工の安定性を損ないます。これにより、仕上げ面の品質が不安定になる、あるいは機械トラブルを引き起こすなど、現場でのトラブルが発生しやすくなります。

6.まとめ

ハステロイは、その卓越した耐食性と耐熱性により、化学・海洋・航空・原子力といった厳しい環境下での使用に適した高機能合金です。用途に応じて複数の種類が存在し、それぞれ特有の性能が活かされています。
一方で、加工の難しさという課題もあり、適切な工具選定と切削条件の最適化が求められます。ダイジェット工業では、そうした難削材に対して豊富な実績と製品群、技術サポートを備えており、製造現場の生産性向上に貢献します。
高機能素材を活かした製品開発や設備導入をお考えの企業様にとって、ハステロイの正しい理解と、それを支える切削技術の選択が大きな鍵となるでしょう。ダイジェットでは、ハステロイのような難削材にも対応可能な超硬工具を多数取り揃えており、最適な加工条件のご提案からアフターサポートまで、現場の課題解決をトータルに支援いたします。

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