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SUS430とは?ステンレス鋼の基本を学ぼう

SUS430とは?ステンレス鋼の基本を学ぼう

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SUS430とは?ステンレス鋼の基本を学ぼう

SUS430とは、鉄にクロムを含むフェライト系ステンレス鋼の一種で、耐食性や加工性に優れた特性を持つ材料です。 主に家庭用製品や自動車部品など、幅広い分野で使用されています。近年、日本国内の中小企業では、SUS430を活用した製品開発が進み、低コストと安定した品質が注目されています。この記事では、SUS430の特徴や用途、他のステンレス鋼との違いについて詳しくご紹介していきます。

 
 

1.SUS430とは

SUS430は、鉄を主成分とし、11〜18%のクロムを含むフェライト系ステンレス鋼の一種です。クロムの含有によって耐食性を持ちながらも、コストパフォーマンスに優れているため、家庭用品から産業用部品まで幅広い用途で使用されています。他のステンレス鋼に比べ、加工性が高く、溶接性も良好であるため、製造業の多くの分野で活用される基本的な材料です。

フェライト系ステンレス鋼としての位置付け

ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系などに分類されます。SUS430はフェライト系に属し、室温下での強度と耐食性のバランスが良いのが特徴です。また、フェライト系のため磁性を持ち、これを活用した特定の用途にも適しています。一方で、オーステナイト系に比べて耐食性はやや劣るため、環境条件を考慮した使用が求められます。

2.SUS430の特徴と特性

耐食性と耐熱性

SUS430はクロムの含有によって酸化を防ぐ不働態被膜を形成するため、一般的な腐食環境に対して十分な耐食性を持っています。ただし、塩分を含む環境や酸性条件下では腐食が進行しやすいため、使用には注意が必要です。また、高温下でも強度を維持する特性を持ち、耐熱性の求められる用途にも適しています。

磁性を持つ特性の活用例

SUS430はフェライト系であるため磁性を持ち、電磁波を遮断する用途や磁気特性が求められる部品に利用されます。具体例として、家庭用電化製品の内部部品や自動車の一部部品などが挙げられます。この磁性特性を理解して選定することで、効率的な材料活用が可能となります。

加工性とコストパフォーマンス

SUS430は、切削加工やプレス加工が容易で、加工時の工具寿命も比較的長いとされています。そのため、加工コストを抑えつつ高品質な製品を作ることが可能です。また、オーステナイト系と比較して価格が安定しているため、低コストで性能を求める製品に適しています。

3.SUS430のメリット

低コストで安定した性能

SUS430はクロム含有量が比較的少ないため、材料コストが抑えられます。これにより、価格競争力の高い製品が製造可能です。

加工性の高さ

フェライト系ステンレス鋼の中でも加工性が良く、特に板金加工や切削加工に適しています。

磁性を利用した特定の用途

磁性を持つため、特定の用途では大きな利点となります。例として、冷蔵庫の内壁や調理器具が挙げられます。

4.SUS430のデメリット

SUS304と比較した耐食性の低さ

酸性環境や塩分を含む環境では、腐食のリスクが高く、適切な防錆処理が求められます。

塩害や酸性環境下での使用制限

例えば海岸沿いや化学工場では耐用年数が短くなる可能性があります。

5.SUS430の用途

台所製品(シンク、フライパン)

家庭用品では、SUS430の耐食性と加工性を活かし、台所シンクや調理器具として利用されています。シンクは水との接触が多いですが、一般的な使用環境では十分な耐食性を発揮します。

家電製品(洗濯機、冷蔵庫の内部部品)

冷蔵庫の内壁や洗濯機のドラム部品などに使用されています。これらの製品は耐久性とコストが重視されるため、SUS430が選ばれています。

自動車部品(マフラー、エンジン周辺部品)

自動車部品では、耐熱性と磁性を活かし、マフラーやエンジン周辺部品に採用されています。これらは高温環境や振動が発生する箇所ですが、SUS430の特性が要求を満たしています。

建築分野(屋内装飾、手すり)

建築分野では、耐食性を活かし、屋内装飾や手すりなどに使用されています。美観と耐久性を両立するための材料として重宝されています。

6.SUS430と他のステンレス鋼との違い

SUS304との耐食性と用途の比較

SUS304はオーステナイト系ステンレス鋼であり、SUS430と比較して耐食性が高いです。ただし、価格が高いため、コストを抑えたい場合はSUS430が選ばれる傾向があります。

マルテンサイト系ステンレス鋼との強度の違い

マルテンサイト系ステンレス鋼は熱処理により高強度が得られますが、耐食性が低いというデメリットがあります。SUS430は強度よりも耐食性を重視した用途に適しています。

鉄との加工性や価格差の検討

一般的な鉄と比較すると、SUS430は耐食性が高い一方、価格は上昇します。しかし、長期的な使用を考慮すると、腐食のリスクが低いため、結果的にコストパフォーマンスが良い場合があります。

7.SUS430の化学成分と規格

主な化学成分(クロム、炭素含有量)

SUS430の主成分は以下の通りです

クロム(Cr):16〜18%
炭素(C):0.12%以下
この組成によって、耐食性と強度のバランスが取られています。

機械的特性と板厚の種類

SUS430は板厚の種類が豊富で、用途に応じて選択可能です。耐久性が求められる部品では厚みのある板が、軽量化が重要な場合には薄い板が使用されます。

JIS規格での分類と認識

SUS430はJIS規格で規定されており、品質が安定しています。このため、信頼性の高い材料として広く認識されています。

8.まとめ

SUS430は、耐食性や加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼であり、特に家庭用品や自動車部品などで広く使用されています。そのコストパフォーマンスの高さや磁性の特性を活かした用途が多く、日本国内の中小企業にとって有益な材料です。一方で、耐食性が高くないため、環境条件に応じた適切な選定が重要です。用途や特性を正しく理解することで、最適な活用が可能となるでしょう。



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