1. HOME
  2. メディア
  3. 技術コラム
  4. 切削音の原因と対策を解説!工場の騒音問題を解決する方法とは?

切削音の原因と対策を解説!工場の騒音問題を解決する方法とは?

切削音の原因と対策を解説!工場の騒音問題を解決する方法とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
切削音の原因と対策を解説!工場の騒音問題を解決する方法とは?

工場で発生する「切削音」は、作業環境悪化や近隣トラブルの原因となる深刻な騒音問題です。

本記事では、切削音の発生メカニズムから、工具と材料の摩擦、機械の振動、加工条件が引き起こす具体的な原因を解説します。この記事を読めば、切削音を低減する具体的な解決策が見つかるでしょう。

1.切削音とは何か

切削音とは、金属や樹脂などの材料を切削加工する際に発生する音の総称です。単なる騒音として捉えられがちですが、その音の種類や大きさ、周波数には、加工状態や工具、機械の状態に関する重要な情報が含まれています。

工場における作業環境の悪化や作業者の健康問題、さらには加工品質の低下や工具寿命の短縮に直結する可能性があるため、その発生メカニズムと特徴を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

切削加工における音の発生メカニズム

切削音は、工具と被削材が接触し、材料が除去される一連の物理現象の中で複合的に発生します。主な発生メカニズムは以下の通りです。

工具と被削材の摩擦

切削工具が被削材に食い込み、材料を削り取る際に生じる摩擦が音の主要な発生源となります。特に切削抵抗が大きい場合や、工具と材料の相性が悪い場合に顕著な音が発生します。

切りくずの生成と排出

切削によって生じた切りくずが、工具や被削材、あるいは機械の内部構造と衝突したり、変形したりする際に音が発生します。切りくずの形状や排出方法によって音質が変化します。

びびり振動(チャタリング)

切削加工中に工具、被削材、または機械全体が共振現象を起こし、不規則な振動を伴うことがあります。この「びびり振動」は、非常に特徴的な高い金属音を発生させ、加工精度や工具寿命に悪影響を及ぼす最も一般的な切削音の原因の一つです。

機械自体の動作音

スピンドルの回転、送り機構の動作、クーラントの噴射など、切削加工機自体の動作に伴う音も切削音の一部として認識されます。これらは加工状態とは直接関係しない場合もありますが、全体的な騒音レベルに寄与します。

切削音の種類と特徴

切削音は、その音質や周波数によって様々な種類に分類され、それぞれが異なる加工状態や問題を示唆しています。主な切削音の種類とその特徴は以下の通りです。

高周波音(キンキン、キーキー、キュルキュル)

一般的に「びびり音」と呼ばれる音で、工具や被削材の共振によって発生します。非常に耳障りな甲高い金属音であり、工具の摩耗、工具剛性の不足、加工条件の不適切さ(切込み量、送り速度、回転速度など)が主な原因であることが多いです。この音が発生している場合、製品の表面粗さが悪化したり、工具の欠損や寿命が著しく短くなったりするリスクが高まります。

低周波音(ゴォー、ブーン、ガタガタ)

機械全体の振動や、剛性の低い大型の被削材が共振することで発生することがあります。比較的安定した加工でも発生しうる音ですが、過度な場合は機械の不調や、加工精度への影響を示唆する場合があります。

金属的な衝突音(ガリガリ、シャリシャリ、バキバキ)

切りくずが工具や被削材に絡みついたり、工具が突然欠損したり、あるいは過大な切込みによって工具が無理な負荷を受けたりする際に発生する音です。突発的に発生することが多く、工具の破損や被削材の損傷に直結する危険な状態を示唆します。

摩擦音(シュー、サー)

工具と被削材が滑るように接触している際に発生する音です。切削抵抗が適切でない場合や、工具の切れ味が鈍っている場合に聞こえることがあります。

これらの切削音の種類と特徴を理解することは、音を単なる騒音としてではなく、加工状態を診断するための重要な手がかりとして活用し、問題の早期発見と解決に繋げる第一歩となります。

2.切削音が発生する主な原因

工具と材料の摩擦による原因

切削加工において、工具と被削材が接触する際に生じる摩擦は、切削音の主要な発生源の一つです。工具の切れ味が悪くなると、切削抵抗が増大し、摩擦熱や振動が発生しやすくなります。例えば、工具の摩耗(フランク摩耗、クレーター摩耗、チッピングなど)が進むと、工具と被削材の接触面積が増え、滑りが生じることで高周波の摩擦音が発生します。

また、構成刃先の形成も、切りくずが工具表面に付着し、剥離する際に特有の異音を生じさせることがあります。工具の材質やコーティング、刃先の形状(すくい角、逃げ角、刃先丸め)が不適切である場合も、過度な摩擦を引き起こし、騒音の原因となります。

機械の振動が引き起こす切削音

切削加工中に発生する振動、特に「びびり振動(チャタリング)」は、非常に大きな切削音の原因となります。びびり振動は、工具、被削材、工作機械のいずれかの剛性が不足している場合に発生しやすく、加工面が波打つ「びびりマーク」として現れることもあります。この振動は、工具と被削材が断続的に接触・離反を繰り返すことで生じ、不快な高周波音を発生させます。

主軸や送り軸の軸受の劣化、ボールねじのガタつき、機械本体の据え付け不良、基礎の剛性不足なども、機械全体の振動を引き起こし、それが切削音として現れることがあります。また、工具の突き出し量が長すぎると、工具自体の剛性が低下し、びびり振動が発生しやすくなります。

加工条件が切削音に与える影響

切削速度、送り速度、切り込み量といった加工条件は、切削音の発生に大きく影響します。切削速度が速すぎると、工具と被削材の接触頻度が増え、高周波の切削音が発生しやすくなることがあります。

一方で、切削速度が低すぎると、構成刃先が形成されやすくなり、摩擦音が増大することもあります。送り速度や切り込み量が不適切である場合も、切削抵抗が急激に変化したり、切りくずの排出が滞ったりすることで、工具や被削材に過度な負荷がかかり、異常な切削音を引き起こすことがあります。

また、切削油剤の有無や種類、供給方法も重要です。適切な切削油剤を使用しないと、摩擦が増大し、工具寿命の低下だけでなく、切削音の増大にも繋がります。加工方法(例えば、フライス加工のアップカットとダウンカット)によっても、切削抵抗の変動パターンが異なり、発生する音の性質や大きさが変化することがあります。

3.切削音の対策方法

機械設備による対策

機械設備そのものや周辺環境に改良を加えることで、切削音の発生を抑制したり、外部への伝播を防いだりすることが可能です。

機械本体の剛性向上と防振対策

切削加工中に発生する振動は、切削音の大きな原因となります。機械本体の剛性を高めることで、振動の発生を抑制し、結果的に切削音を低減できます。具体的には、より重く、振動を吸収しやすい構造の機械を選ぶことや、既存の機械に対して防振マウントや防振パッドを設置し、基礎との間に緩衝材を挟むなどの対策が有効です。

工具保持具の選定と剛性確保

工具を保持するツーリングやチャックの剛性が低いと、加工中に工具が振動しやすくなり、ビビリ音の原因となります。高剛性のツールホルダーや、振動減衰機能を持つ特殊なツーリングを選定することで、工具の安定性を高め、切削音を抑制できます。

防音カバー・吸音材の設置

切削音の伝播を防ぐためには、機械に防音カバーやエンクロージャーを設置することが非常に効果的です。また、工場内の壁や天井に吸音材を設置することで、音の反響を抑え、騒音レベルを低減できます。吸音材はグラスウールやロックウール、ウレタンフォームなどが一般的です。

加工条件の最適化

切削加工の条件を適切に設定することで、切削音の発生を最小限に抑えることが可能です。加工条件は、工具の選定から送り速度、回転数、切込み量など多岐にわたります。

切削速度・送り速度・切込み量の調整

これらの加工条件は、切削音の発生に大きく影響します。特に、特定の切削速度や送り速度でビビリ振動が発生しやすい「共振点」を避けることが重要です。

試行錯誤や加工シミュレーションを通じて、最も安定した切削音の少ない条件を見つけることが求められます。一般的に、切込み量を小さくする、送り速度を調整するなどで改善が見られる場合があります。

工具の選定と状態管理

切削工具の材質、形状(刃数、刃先角度、ヘリカル角など)、コーティングは、切削音に大きく影響します。被削材に合った工具を選定し、摩耗した工具は早めに交換することで、不要な摩擦や振動を抑え、切削音を低減できます。また、工具の振れ精度も重要です。

切りくず処理の改善

切りくずが適切に排出されないと、工具やワークに絡みつき、異音やビビリの原因となります。適切なクーラントの供給方法や、切りくずを細かく分断するチップブレーカー付き工具の使用、切りくず排出性の良い工具パスの選択などが有効です。

工場レイアウトの改善

工場のレイアウトや空間設計を見直すことで、騒音の伝播を抑制し、作業環境全体の騒音レベルを改善できます。

騒音発生源の隔離と配置

切削音の発生源となる機械を、他の作業エリアや事務所、休憩スペースから物理的に離して配置することが基本です。可能であれば、騒音の大きい機械を一つの区画に集約し、防音壁や防音扉で隔離する「ゾーニング」を行うと効果的です。

吸音・遮音壁の設置

工場内の通路や作業エリアの間に、吸音材や遮音材を組み込んだパーティションや壁を設置することで、音の伝播を遮断し、特定のエリアへの騒音の影響を軽減できます。壁の高さや材質も、騒音対策の有効性に影響します。

床・壁・天井の材質見直し

工場内の床、壁、天井の材質も、音の反響に大きく関わります。コンクリートや金属など硬い素材が多いと音が反響しやすいため、吸音性の高い素材(例:吸音パネル、吸音塗装)を導入することで、工場全体の残響時間を短縮し、騒音レベルを低減できます。特に天井からの反響音は作業者への影響が大きいため、天井吸音材の設置は有効な対策の一つです。

4.切削音測定と評価方法

騒音計を使った測定手順

切削音の測定には、一般的に騒音計(サウンドレベルメーター)が用いられます。測定の際は、以下の手順とポイントに留意することが重要です。

測定器の選定と校正

JIS C 1509-1(騒音計)に適合した精密騒音計を使用し、測定前に必ず校正を行います。

測定点の選定

音源となる切削加工機から1mの位置、作業者の耳の高さ、あるいは作業環境全体の騒音レベルを把握するための複数点を設定します。背景騒音の影響を考慮し、可能な限り切削音のみを捉えられるように工夫します。

測定条件の設定

測定モードはA特性(人間の聴感に合わせた補正)、時間重み付けは速い(FAST)または遅い(SLOW)を使い分け、必要に応じてC特性(低周波音の評価)や周波数分析も行います。

測定の実施

一定時間(例:10秒以上)連続して測定し、騒音レベルの変動を記録します。複数回測定を行い、平均値や最大値を算出することで、より信頼性の高いデータを得られます。

騒音レベルの評価基準

測定された切削音の騒音レベルは、以下の基準に基づいて評価されます。これらの基準は、従業員の健康保護や周辺環境への影響を判断するために重要です。

労働安全衛生法に基づく基準

労働安全衛生規則では、騒音作業場における騒音レベルの許容基準が定められています。特に、等価騒音レベル(Leq)が85dBを超える作業場では、騒音障害防止のための対策が義務付けられます。詳細は厚生労働省の騒音障害防止のためのガイドラインをご確認ください。

騒音規制法に基づく環境基準

工場などの事業活動による騒音は、騒音規制法によって規制され、特定工場等から発生する騒音については、地域の用途地域に応じて許容限度(規制基準)が定められています。これにより、周辺住民への騒音影響が評価されます。

ISO規格や自主基準

国際標準化機構(ISO)が定める規格や、企業独自の騒音管理に関する自主基準も評価の指標となります。これらは、より厳格な管理や品質向上を目指す場合に適用されます。

5.まとめ

切削音は、単なる騒音問題に留まらず、加工品質の低下や作業環境の悪化を招く深刻な課題です。その発生原因は、工具と材料の摩擦、機械の振動、不適切な加工条件など多岐にわたります。

切削加工における音の問題は、単なる騒音ではなく、加工の精度や工具の寿命にも直結する重要な課題です。本記事で解説したように、その解決には原因を特定し、工具、機械、加工条件など多角的なアプローチが不可欠です。

切削音の問題でお困りの方は、ぜひ一度、ダイジェット工業にご相談ください。長年培ってきた経験と技術力で、お客様の加工課題に合わせた最適な工具とソリューションをご提案します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加