A7075(超々ジュラルミン)とは?特徴、用途、加工における注意点などをわかりやすく解説

高強度と軽量性を兼ね備え、「超々ジュラルミン」として知られるアルミニウム合金A7075は、航空宇宙から自動車、スポーツ用品まで幅広い分野で不可欠な素材です。しかし、その優れた特性ゆえに、加工現場では高硬度や熱伝導性の高さといった特有の課題に直面することも少なくありません。
本記事では、A7075の基本的な知識から、そのメリットと加工上の注意点を解説します。また、加工する際に気をつけたいポイントなどもご紹介しています。
1.A7075とは?
7000系アルミニウム合金の位置づけ
A7075は7000系アルミニウム合金に分類され、主成分である亜鉛とともに、マグネシウムや銅を加えることで高強度を実現した材料。一般に「超々ジュラルミン」として知られ、アルミ合金の中でも最も高い強度を誇るグレードに属しています。
化学組成と物理的特性
A7075は、Zn 5.6〜6.1%、Mg 2.1〜2.5%、Cu 1.2〜1.6%、Cr 0.18〜0.28%などを含みます。比重は約2.81、引張強さは最大572MPa、硬度はブリネル硬さで150HB前後とされ、軽量性と強靭性を両立しています。
一般的な用途と需要の背景
航空機の構造材、自動車部品、スポーツ機器(自転車や登山用具など)、半導体装置部品など、高強度・軽量性が求められる分野で広く利用されています。特に、日本国内でも航空機需要の回復やEV市場の拡大により、今後もA7075の用途拡大が期待されています。
2.A7075のメリットと欠点
優れた引張強さと軽量性
A7075の最大の特長は、鉄鋼材料に匹敵する引張強さを持ちながらも、アルミならではの軽量性を維持している点です。この特性は燃費や省エネが求められる現代のモビリティ設計において大きな武器となります。
耐食性と応力腐食割れへの懸念
一方、腐食性にはやや劣っており、特に応力腐食割れ(SCC)には注意が必要です。そのため、表面処理やコーティングによる補強が前提とされるケースも多くあります。
熱処理と硬度管理の重要性
A7075は熱処理により機械的特性が大きく変化します。例えば、T6(人工時効硬化処理)で最大強度を得る一方で、T73では応力腐食割れ耐性が向上します。用途に応じた適切な質別選定が鍵となります。
3.A7075の用途とは
航空・宇宙産業における基幹材料
A7075は航空機や宇宙機器の構造材に代表的に使用されています。航空機の軽量化は燃費向上や積載量増加に直結するため、A7075はその強度と軽さから翼の骨格、胴体の一部、着陸装置などに採用されることが多いです。また人工衛星やロケットにおいても、打ち上げ時の強度と軽量性が同時に求められることから、欠かせない材料として利用されています。
自動車・モータースポーツ分野での軽量化
自動車産業でもA7075は車両の軽量化と性能向上に貢献しています。特にEVのバッテリー重量増を補う目的での需要が高く、サスペンション部品、ホイール、エンジンブロックの一部などに採用され、燃費改善や運動性能向上に貢献しています。モータースポーツでは、レーシングカーやバイク部品に積極的に使用されており、軽量性と高強度が威力を発揮しています。
高性能を追求する一般消費財・産業機器
A7075は、一般消費財や様々な産業機器にも活用されています。例えば、自転車のフレームやパーツ、登山用具、カメラのボディ、PC・スマホ筐体など、高強度かつ軽量性が求められる製品で利用されています。また、半導体製造装置や精密医療機器など、高い精度と信頼性が要求される部品にも利用されており、製品の高性能化と新たな価値創造に貢献しています。
4.加工の難しさと精密加工への課題
切削性の課題と表面仕上げの難易度
A7075は高硬度かつ靭性が高いため、切削加工時にバリの発生や表面粗さの管理に苦労することが少なくありません。切削条件を最適化しないと、精密部品では後工程での研磨や補正が必要になる場合もあります。
工具摩耗と加工熱対策
切削抵抗が大きく、工具摩耗も早いため、耐摩耗性に優れた超硬工具が求められます。また、熱伝導性が高いことから、加工中の発熱による寸法変化も懸念され、冷却剤の使い方や加工サイクルの見直しが必要となります。
微細加工・穴あけ加工における注意点
A7075の微細な溝や小径穴加工では、切りくずの排出性が加工精度に大きく影響します。アルミニウム特有の粘着性で切りくずが詰まりやすく、工具破損や加工不良の原因にもなり得ます。特に深穴加工では、専用ドリルやステップ加工、高圧クーラント供給などで切りくず詰まりを防ぎ、安定した高精度な加工を実現する必要があります。
5.まとめ
A7075はその高強度と軽量性から、次世代製品に不可欠な素材となっています。しかしその一方で、加工面では高度なノウハウが要求される難削材でもあります。
ダイジェット工業の超硬切削工具は、加工現場が抱える課題を着実に解決し、高精度・高効率な製品づくりを可能にします。A7075のポテンシャルを最大限に引き出すためにも、信頼できる工具を選定しましょう。